2010年2月9日火曜日

新日本製鉄君津製鉄所を見学しました

今日は、ゼミ生たちと新日本製鉄君津製鉄所を訪問し、銑鋼一貫製鉄所の諸工程を見学してきました。この工場見学は、もともとは昨年の8月31日に予定していたものでしたが、このときは、あいにく台風の直撃を受けて断念。今回の工場見学は「再チャレンジ」でした。


新日鐵君津製鉄所は、敷地面積こそ八幡製鉄所より若干小さいものの、粗鋼の生産高は同社で最大。年間に約1000万トンの粗鋼を生産しているそうです。日本の粗鋼生産高が年1.2億トン(2007年。2009年は、金融危機の影響をうけて、9000万トンを割り込んでいます)ですから、君津製鉄所だけで日本の粗鋼の約1割を生産していることになります。日本で最大級の製鉄所です。

製鉄所では、敷地の広さ、高炉の大きさ、圧延工程のダイナミックさなど、いろいろなものに驚かされました。敷地面積は約1020万平方メートルもあるそうです(東京ドーム220個分)。「5km×2km」と言った方が、わかりやすいかもしれません。これだけ大きい工場の敷地内ですから、あちこちで枝分かれした鉄道も敷設されています。もちろん歩いて移動するわけには行きませんから、バスに乗って見学することになります。そうやってたどり着いた高炉の、なんと大きなこと。高炉の高さは100メートル以上あるそうです。まるでピラミッドのようです。今回の見学のメインは、転炉で出来た鋼の塊(鋼片)を熱間圧延する工程でしたが、数メートル四方の熱々の鋼(スラブ)が、あっという間に数十メートルもの長さにローラーで伸ばされていく様は、とにかく「圧巻」でした。わたし自身は、銑鋼一貫製鉄所の諸工程(製銑(高炉)→製鋼(転炉)→圧延)について、かねてから本で読んである程度わかっていたつもりでしたが、百聞は一見に如かず。映像やパンフレットを交えつつの見学で、本を読むだけではわからなかったことも、これまで以上に理解を深めることができました。

日本の製鉄所の技術水準は世界一です。排熱等で発電を行って電力会社に電力を供給しているほか、工業用水も徹底的に再利用。単位あたりのCO2排出量も世界で最も少ない水準にあります。もちろん製品の技術力も高く、とくに自動車や家電用の薄型鋼板などは、中国やインドのメーカーには、日本のメーカーのようにはなかなか作れません(鉄鋼産業はとても地味な産業なので、その技術力の高さは、意外と知られていませんが・・・)。鉄鋼産業は、日本が世界に誇る技術を持つ産業のひとつなのです。

とても勉強になる「大人の社会見学」ですが、残念ながら、製鉄所内での写真撮影は、一部を除いて許されていません。おそらく、技術の漏洩を防ぐためもあるのでしょう。興味がある方は、ぜひ実際に見学に行ってみて欲しいと思います。わたし自身は、現在のゼミ生達が卒業したら、新しいゼミ生達とともに、また見学に行こうと思っています。







(2010年2月11日追記)
見学を終えての帰途、ゼミ生達と話していたときに「なぜ高炉は、三交代で24時間フルに稼働させているのか?」という疑問の声がありました。答えは、「高炉は、稼動させるのに時間がかかるので、簡単に停止-再稼動というわけにはいかない」というところですが、では、いったん止めた高炉を再稼動させるのにどれだけの時間が必要なのでしょうか? たまたま、新聞に、その答えとなるヒントが載っていました。

JFE、高炉1基を再稼動 輸出増などに対応
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20100211ATDD1100E11022010.html

 JFEスチールは11日、減産のために2009年1月から休止していた西日本製鉄所倉敷地区(岡山県倉敷市)の高炉1基を再稼働させた。(中略)同日記者会見した野村寛・西日本製鉄所長は「順調なら数日でフル稼働に持っていきたい」と語った。

この野村所長の発言は、「高炉というものは、いったん止めてしまうと、フルに再稼動させるのに最低でも数日かかる」ということを意味しています。そういえば、「製鉄所のストライキで、高炉を止めるというのは、本当に最後のこと」という話を、組合運動に詳しい労働経済論の研究者から、かつて聞いたことがあります。高炉をストップさせるということは、企業側(経営者側)にとっても、労働者側(組合側)にとっても、よほどの事態なのだと言えます。



(関連参考資料)
川崎製鉄・川鉄マシナリー・山九 革新的な大型高炉改修技術による超短期改修の実現:大ブロックリング工法の開発

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