2010年7月19日月曜日

日本に必要なのは、政策や実行力ではなく、なお一層の閉塞感?

香港の日系金融機関で勤務している知人(と言っても一回り以上年上の方ですが)が、日本に一時帰国したということで、千葉駅の近くでお会いし、財政を含めた日本経済の行方や、中国経済の現状等について、いろいろと意見交換してきました。この方は、もともとは新聞記者だった方ですが、その経験からか「世の中は、政策では変わらない。国民の感情が大きく揺さぶられないと、物事は動かない」と仰っていたのが、わたしにとっては印象的でした。

確かにその通りかもしれません。9.11→米国民の対テロ戦争への支持、米兵によるレイプ→沖縄での反基地集会の盛り上がりなどは、その典型例です。IMF危機後の韓国のドラスティックな変革も、このパターンでしょう。

さて最近は、一定以上の年齢の日本人にとって、日本と日本経済の閉塞感・危機感が高まっています(若い人にとっては、最初からずっと日本と日本経済が閉塞しているなかで育ってきているので、このような閉塞感や危機感があまりないようですが)。こうした閉塞感・危機感をもたらしているものの一つに、財政危機があります。「何とかしなくては」という思いに駆られた人々は、政界・財界・市民を問わず増税を考えるようになっており、そのような政策提言も各方面から活発になされています。でも、それにもかかわらず、先日の参議院選挙の結果からすると、消費税増税にはまだかなりの時間がかかりそうです。つまりは「世の中は、政策では変わらない」。日本国債の消化が難しくなって債務危機が表面化するなどして、国民の感情が大きく揺さぶられないと、増税という物事も、動かないのかもしれません。それでいいとは思わないのですが、世の中はそんなものかもしれません。


この方とのお話しで、もう一つ気になったのが、若い社員の鬱の多さです。この方の同僚でも、香港に赴任したものの鬱になって日本送りになってしまう若い社員が、少なからずいるそうです。わたしぐらいの年齢になると、同年代の知人は、職場に新しく入ってきた新人を教育する立場になっているのですが、彼・彼女達と会うと必ず聞かされる事の一つに「最近の若者は、メンタル面が弱い」「最近の若者は、男性でもすぐ職場で泣く。どうなっているんだ?」といった苦情(?)がありますので、この方の職場の状況も、納得できるものです。

ただし、こういう「最近の若者」を不甲斐ないと思う年長者のなかには、若者を鍛えるためにと称して、徴兵制だの農村ボランティアで働かせろだの、いろいろと過激なことを言う人がいますが、無理な話だと思います。「世の中は、政策では変わらない」のです。物事が動く時は、「国民の感情が大きく揺さぶられ」るときだとすれば、日本で物事がまだ大きく動かないということは、国民の感情がまだ高まっていないということなのでしょう。逆説的ですが、財政再建をはじめとする日本の変革のために必要なのは、政策提言や政治家の実行力などではなく、もっともっと日本と日本経済がさらに混迷の度合いを深め、にっちもさっちもいかなくなって閉塞感が強まること、なのかもしれません。

日本の停滞は、まだまだ続くのでしょうか。

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