2021年12月2日木曜日

年賀状を書く季節に

早いもので、年賀状を書く季節になりました。4年ぐらい前でしたか、授業の際に雑談として、年賀状を書くかどうかを学生さんに尋ねたら、「書かない」という人が圧倒的に大多数で、書く場合でも来たものへの返信的なものが数枚程度、ということだったように記憶しています。定年齢以下の人にとっては、年賀状とは「昭和の遺物」なのかもしれません。

なにしろ、いまはメールだけではなく、GAFA系のアプリや、ライン、ツイッターなど、やり取りためのオンラインツールがたくさんあります(以下、メール等と総称)。そういったものがあるなかで、なぜ年賀状なのか。いろいろな理由があるので、幾つか記してみましょう。

第一は、敢えて「つながらない」ということです。私などは、三が日にメール等でやり取りすることは、基本的に控えたい。年がら年中メールのやり取りをしているなかで、三が日ぐらいはそういったやり取りなしで静かに過ごしたい、という思いがあります。自分がそう思うだけではなく、相手に対しても、メール等で三が日にコンタクトを取るというのはディスタービングであり場合によっては不躾である、とも思います。

第二に、人間関係の濃度がさまざまなことでしょう。普段からやり取りや交流のある相手もいれば、そうではない相手もいる。そうした濃度の薄い相手に対して、年に1回、よりによって三が日にメール等でコンタクトを取るというのは、心理的にハードルが高い。逆の立場であれば、返信の内容に悩むことにもなりえます。しかし、年賀状の場合はそのようなことがない。

第三に、前項と関連して、メール等でコンタクトを取れば、返信、返信、また返信、とやり取りの応酬が続くこともありえます。そうなると、三が日であるのに、慌ただしくやり取りすることにもなりかねない。それが一人や二人であればともかく、人数が多くなれば、時間も多く割くことになります。それに対して年賀状であれば、双方送るだけで、それ以上のやり取りは発生しない。この、それ以上のやり取りをまず発生させないというのが、紙の郵送物の良いところです。

第四に、人数の問題もあります。メール等であれば、文面は相手によって使い分けることになりがちです。コンタクトを取る人数が多ければ多いほど、その使い分けによる時間コストも馬鹿にならない。対して、年賀状は基本的には文面はあまり変わりません。私の知り合いで、賀状の文面を数種類作り、相手によってそれらを使い分けている、という人がいますが、これはやや例外的ではないかと思います。

この人数の問題というのは、多くなれば多くなるほど、第一や第三の問題に影響を及ぼします。また一般的に言えば、学生さんよりも社会人、しかも年齢と人間関係が積みあがった社会人ほど、やり取りをする人は増えるので、上に記したようなメール等のデメリットと、年賀状のメリットが増えるように思います。私の場合で言えば、大学生ぐらいまでは年賀状を出すのは20~30人程度だったように記憶していますが、その後、枚数はじわじわと増えて、30代に入ると100枚を超えました(注)。ただ、お世話になった年長者が鬼籍に入られたり、終活の一環として年賀状をおしまいにされることもあり、40代に入ってからは100枚を割るようになりました。また、私などの世代では知り合いになった方に年賀状を自分から送り、それから毎年のやり取りをするようになる、ということがよくあったのですが、最近の若い方からは、知り合いになってもこのように年賀状を送られることはまずないので、やり取りする枚数が増えることはなく、減っていく一方なのだと思います。


ところで、もう1年前近くになりますが、今年(2021年)にもらった年賀状では、幾名かの方が、「今年はコロナが終わって、云々できたら・・・」と書いておられました。私などは今年2021年の元旦の時点で、2021年もコロナ継続と思っていたので、上記のように書かれていた年賀状の文面を読んでは、「いやー、それはちょっとありえないでしょう」とツッコミを入れていたのですが、ご本人たちは、これをどのような気持ちで書いておられたのか。

すなわち、「本当にそうなるに違いない」と思って書いていたのか、あるいは「そうならないだろうが、せめて賀状という文面上ではそう願うと書いておこうか・・・」という思いだったのか、このあたりのことはわかりません。

それはともかく、いま思うのは、「2022年の年賀状で、皆さんどのように書いてくるのだろうな。また、2021年の年賀状同様に、『今年はコロナが終わって、云々できたら・・・』と書いてくるのかな」ということです。これが、来月にもらえるであろう皆様方からの年賀状で、ちょっと楽しみなことです。


(注)以前に、交友関係の広い方に、何枚ぐらい年賀状をやり取りするのかを聞いたことがあります。ある学者Aと学者Bは400枚ぐらい、とのことでした。最大だったのは、私の元上司で、たしか700枚と仰っていた記憶があります。「年賀状ソフトを使うようになる前は、毎年12月になると、妻と二人で毎週土日を年賀状書きにあてていた」、とのことでした。確かにこれだけの枚数の住所を手書きとなると、1日や2日では済まないでしょうし、温かい方で、私などにも一言記して下さる方でしたので、多くの方に一言記すとなると、あて名書きについては奥様の手を借りないと・・・ということだったのでしょう。


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