2022年4月5日火曜日

新型コロナ感染症を考える:感染経路、感染対策、コロナの今後

新型コロナ感染症も3年目に入ってしまった。行動が制限されてきた学生たちが不憫でならない。

今日は、コロナウイルスの感染経路や、感染防止対策について、私がこれまで学んできた知見やエビデンスと、私が独自に測定したデータをあわせて紹介しておきたい。また、COVID-19への対策の意義とコロナの今後も記したい。

目次

1. 誤解されてきた感染経路

2. 何が感染防止対策として適切であり、何が不要なのか

2.1 不要な「消毒」

2.2 適切な「換気」

2.3 マスクはどの程度効果があるのか

2.4 十分な換気ができない時はどうすればよいのか

2.5 小括

3. 新型コロナウイルスへの対策の必要性の有無とコロナの今後


1. 誤解されてきた感染経路

コロナウイルスは、どのように感染するのか。これまでに取り上げられてきた感染経路は、大別すると、①接触感染、②飛沫感染、③エアロゾル感染(または空気感染)の3つであった。

結論から先に言えば、①はほぼなく、③が主である。

当初、つまり2020年春頃の時点では、今思うにかなりの混乱がグローバルにみられた。たとえば、米WSJ紙も、スマホを消毒すべきかどうかという、今思うに寝ぼけた記事を書いていた。手で鼻を触ることは感染リスクがあるという話もあった。そうしたなかで、アルコール消毒というものが広がっていった。

しかし、米国CDCは既に、コロナ感染のうち、①の接触感染は感染1万件あたり1件未満、つまり感染全体の0.01%未満だとしている。要するに、「接触感染は(ほぼ)ない」というのが、世界の医学的なコンセンサスである(CDCは10万件あたり6.5件程度としているという説もあるが、出所の確認が取れていない)。

では、接触感染がないのであれば、コロナウイルスはどのように感染するのか。これについても、既に世界では医学的なコンセンサスが固まっている。③のエアロゾル感染(または空気感染)が主だということである。

人が会話をすると、エアロゾルが発生する。このエアロゾルは小さいため、口元からすぐには落下せず、閉鎖空間であれば3時間程度は浮遊することがあるとされる。感染者が発したコロナウイルスが含まれているエアロゾルを「大量に」吸い込むと、感染・発症する「可能性」が高まる。2021年春時点で、このようなメカニズムはわかっていたので、WHOや米CDCはこのエアロゾル感染(または空気感染)を感染経路とアナウンスした

ところが日本では、③のエアロゾル感染を、政府も「専門家」も認めてこなかった。③のエアロゾル感染を厚労省が認めて公表したのは、2021/10/29のことであり、それまでは①と②しか認めてこなかった。感染研(国立感染症研究所)に至ってはもっとひどく、有志による公開質問状をつきつけられたあと、2022/3/28になってようやく③のエアロゾル感染を認めたほどである。これだけでも世界の医学的コンセンサスからの文字通りの周回遅れであるが、いまだにこれが主であるとまで認めるには至っていない。

エアロゾル感染は、外ではまず起こらない。人の吐く息は、一瞬で希釈されるからである。わずかな例外は、至近距離で長時間話し込み続けた場合で、これは日本では、バーベキューにおいて、感染者が風上にいて長時間談笑していた際に、風下側にいた者が感染した事例が報告されている。初期に感染が目立ったあと徹底的に抑え込んだ中国でも、7324例の感染者の感染状況のうち、屋外での感染は1例と報告されている

②の飛沫感染はどうか。飛沫はエアロゾルよりも大きいため、通常の会話では数十センチしか飛ばずに、すぐに落下する。これが1m以上飛ぶケースは、かなり大きな声で叫んだような場合等に限定される。そこで米国は、2020年の春に、6フィートという対人距離を取ることを推奨した。これ自体がおそらく安全牌的な拡大解釈だった可能性があるが、この6フィートという距離をメートル換算する際に、さらに安全牌的な拡大解釈と四捨五入で2mにしたというのが、日本で起こったことだろう。

問題は、②の飛沫感染が、いったいどの程度起こるのだろうか、である。政府は③のエアロゾル感染を感染経路としては認めたものの、いまだにこれを主とはせず、②の飛沫感染のほうを重視している。しかし愛知県立大の清水宣明教授が言うように、「飛沫は比較的重いため、口や鼻から吐き出されると空中を漂わず、瞬時に落下します。それを鼻から吸い上げるというのは大変難しく、飛沫感染と言われているのも大半が空気感染」、というのが妥当であろう。

なお、一部の政府関係者、NHK、一部の医学者などは、③について、エアロゾル感染や空気感染という言葉を使わずに、「マイクロ飛沫感染」という言葉を使っている。なぜこのようなことを言うのか。推察するに、おそらく、飛沫感染という言葉を維持することで、素人に対しては、これまで否定してきたエアロゾル感染(または空気感染)を認めるという方向転換をしたことをぼかしつつ、玄人に対しては「マイクロ飛沫=エアロゾル」である、という言い訳ができるようにしているのだろう。つまり、感染経路についてのこれまでの周知が間違っていたことを認めたくないがゆえの、ごまかしだろう。


2. 何が感染防止対策として適切であり、何が不要なのか

感染経路とそのメカニズムがわかれば、何が感染防止対策として適切であり、何が不要であるかも見えてくる。

2.1 不要な「消毒」

まず、①の接触感染を防ぐとされてきた消毒は、そもそも接触感染じたいがない以上、「不要」の一言につきる。

実際に、千葉大学の総合安全衛生管理機構は、この間に「千葉大学での教育研究活動におけるCOVID19対策」を随時改訂してきたが(このページで更新されていく)、消毒という言葉は改訂のたびに後退しており、2021/10/1版になると、もはや消毒の必要性については、「患者発生時には、共用物の消毒・拭き掃除を行うこと」とあるだけである

つまり、大学としては、日常的な消毒、教室や会議室での手指のアルコール消毒については、まったく求めていない。この方針は、直近の2022/4/1版でも同様である。「この方針を作成した産業医は、接触感染はほぼないという世界の医学的コンセンサスを適切にふまえている」というのが、私の評価である。

単に不要であるだけならばまだしも、頻繁なアルコール消毒は、手を痛めるほか、周囲にも悪影響を及ぼす。アルコール消毒は、害悪以外の何物でもない、ということが広く理解されるべきである。


2.2 適切な「換気」

次に、もっとも重要な③エアロゾル感染(または空気感染)を防ぐのは、換気である。具体的には、CO2濃度を一定水準以下に保つべきである。では、どの程度を目指すべきか。

コロナウイルスよりも感染力の強い結核の場合、CO2濃度が700~800ppm以下であれば二次感染をほぼ抑制できるという(雑誌『選択』2022年1月号)。ただコロナウイルスの場合は、空気感染力は結核よりも低いため、さしあたり1000ppm以下が目指されている。

実際に、行政による飲食店への換気指導(客が談笑する飲食店において、CO2 濃度が1000ppm以下となるために、どのように外気の吸い込み口と排出口を設定すればよいかのコンサル)では、1000ppm以下が目指されている

同様に、千葉大学の総合安全衛生管理機構の「千葉大学での教育研究活動におけるCOVID19対策」においても、2021/10/1版からは、「講義中の講義室などでは、適宜 CO2モニターを利用し、CO2濃度が1000ppm以下になるように換気をすること」と明記されている(直近の2022/4/1版でも同様)。

それでは、CO2濃度が1000ppm以下になる換気とは、どの程度のものだろうか。私はCO2濃度測定モニターを使って、CO2濃度をあちこちで測定したので、その測定結果のうち、講義室での数値、およびそれ以外での数値を記しておきたい。


測定環境(1):

人数:最大収容人員が77名の千葉大学教育学部2号館2201教室で、51名が入室(全員がマスクを着用)。

換気:窓4か所を6~8センチ程度あける+内廊下のドア2か所を6~8センチ程度あける+換気扇(第3種)を回す

測定結果:当初(換気開始直後)は1100ppmを超えていたが、換気開始後ほどなくして1000ppmを割り込んだ後は、ほぼ900ppm台で推移(時に900ppmを割り込んだ)。長時間が経過しても1000ppmを超えなかった。

論評:この測定環境下でエアロゾル感染(または空気感染)が起こる可能性はまずない、と断言してよかろう。


測定環境(2):

人数:最大収容人員が501名の千葉大学教育学部2号館2101教室で、100余の教職員が入室(ほぼ全員がマスクを着用)。

換気:ドア2か所を一定程度あける+窓のいくつかをあける

測定結果:600ppm台で推移。

論評:この測定環境下でエアロゾル感染(または空気感染)が起こる可能性は、およそ考えられない。仮に感染者がいたとしても、全員がマスク着用なしでも、何ら問題ないレベルであろう。


換気において重要なのは、窓やドアを全開にしてはいけない、ということである。窓やドアを全開にすると、騒音被害が生じやすくなるだけでなく、何よりも暖房や冷房の効率が大きく落ちる。暖房や冷房の稼働には、エネルギーとコストを要する。換気のための窓開けは、上記からもわかるとおり、「少し」で十分であり、換気を不必要なまでに徹底しようとするあまり、化石燃料や大学予算を無駄遣いすることは、社会的にも、地球環境的にも許されない。「過ぎたるは及ばざるがごとし」は感染症対策にもあてはまる。そのためにも、CO2濃度の測定が必要なのである。


次に、教室以外でのCO2濃度は、どのように考えたらよいか。

私は、飲食店、スーパー、電車等の不特定多数が出入りする場所でもCO2濃度を測定してきたが、1000ppmを超えるところは割と限定される。もちろん、換気の仕方(とりわけ吸気口の場所や排気口の能力)や、室内の人数等によって測定値は大きく変動するので一概には言えないのだが、スーパーでは600台~800台、混雑していない飲食店でも400~900台であった。また、飲食店では、ホテルのレストランは概して成績が良かった。意外と高そうに思えたデパ地下でも、500~600台であった(ただし、これは比較的客数が少ない時間帯であり、混雑時はもう少し高いかもしれない。もっとも、1000ppmを超えることはなさそうに思われた)。

電車については、乗客の多寡、駅間距離(によって異なるドア開閉=換気の頻度)、窓を開けているかどうかで、測定結果は大きく異なる。ガラガラにすいている京成線では、500を割り込んだ。京成線やJR線の各駅停車や快速で、車内に20~40名程度の乗客がいる場合でも、600~800台である。高くなるのは長距離列車で、駅間距離が長いとドア開閉=換気の頻度が落ちるためか、たとえば東海道新幹線では2/3程度の乗車率でも1200~1400台と高くなる(2022年3月計測)。

ところで、2022/3/28に感染研が③のエアロゾル感染(または空気感染)を認めたあと、ネット界隈では、電車内での感染を恐怖する声が生じたが、そのように考える必要はない。なぜなら第一に、電車内では1000ppmを必ず超えているわけではないし、第二に、超えている場合でも多くの人は黙っていて話をしていない、つまりエアロゾルの発生はごく限られているからである。

では、逆に、CO2濃度はどこが高いのだろうか。私の計測した範囲では、じつは「自宅」ではないかと思われる。1人でいるだけで、約6畳の書斎では、1~2時間程度で、1000ppmを超えるし、約6畳の寝室でも、就寝から7時間後の朝には1200ppmを超えた。書斎や寝室よりも広いリビングでも、すぐに800~900台には簡単になる(ただし24時間空調用の吸気口はなく、風呂と台所で換気扇を24時間回している状態)。これは、すべて1人でいる時の話であり、人数が2人、3人、4人…と増えれば増えるほど、CO2濃度が高くなることは言うまでもない。

このような高いCO2濃度の家で、エアロゾル感染(空気感染)が生じないほうがおかしい。実際に、日本では、デルタ株の時点で、コロナウイルスの感染者の6割程度が家庭内感染であった。オミクロン株では、感染者の7割が家庭内感染であり、残る3割も大半が施設内(高齢者施設や幼稚園・保育所など)であるが、至極当然の話である。もっとも危ないのは、「家庭」「家族」であり、飲食店ではない。

なお、②の飛沫感染については、対策として、アクリル板や座席間の衝立、ビニールシートなどが横行している。しかし、「飛沫感染と言われているのも大半が空気感染」であると考えられること、またアクリル板や座席間の衝立、ビニールシートなどは換気を阻害しやすく、エアロゾルを含んだ空気が特定の箇所に滞留する可能性を高め感染を促進することから、基本的には不要であろう(こちらも参照)。むしろ、逆に、一部の飲食店では、サーキュレーターによりエアロゾルを含んだ空気が特定の箇所に滞留せず排出されるようにしているが、これは適切である。


2.3 マスクはどの程度効果があるのか

マスクにどの程度の効果があるのかは、感染症対策のなかでももっとも決着をつけるのがむずかしい論点である。

マスクに効果があるかどうかは、マスクの遮断性能では、じつは判定できない。なぜならば、マスクを装着することで、マスクをしない場合にはない感染リスクが生じる可能性がありえるからである。

したがって、マスクに感染予防効果がどれだけあるのかは、「富岳」のシミュレーションのようなものでは、判定できない。そうではなく、多数の人々を、マスク装着群と非装着群にわけ、どちらがどの程度感染するかどうかを比較対照してみなくてはいけない。つまり、医学薬学ではじまり、いまや社会科学にも応用されているRCT(ランダム化比較試験:randomized controlled trial)を行なわなくては、マスクの感染予防効果は判定できない。

では、マスクの感染予防効果をRCTで検証した研究成果は、あるのだろうか。これはもちろん存在するのだが、困ったことに、効果があるとする研究成果(マスク装着群のほうが感染していない)と、逆に効果がないとする研究成果(非マスク装着群のほうが感染していない)の両方があるようである。

したがって、私自身は、これについてまだ断言できるほどの結論を得るに至っていない。ただし、効果があるにしても、換気がしっかりなされていれば、至近距離で話すとき以外は不要では、というのが私の現時点での推察である。

なお、言うまでもなく、外ではマスクは(基本的に)必要ない。人の吐く息は、一瞬で希釈され、そうした希釈された空気を吸い込んでも感染には至らないからである。実際に、千葉大学の総合安全衛生管理機構の「千葉大学での教育研究活動におけるCOVID19対策」では、当初より一貫して、「建物内では原則としてマスクを正しく着用すること」としている。裏返せば、屋外でのマスク着用は、原則として必要ない、ということである。


2.4 十分な換気ができない時はどうすればよいのか

十分な換気ができない時はどうすればよいのか。これについても、世界的には既に医学的な解決策が出ている(「コロナ『空気感染』をどう防ぐか」『選択』2022年1月号)。

第一は、HEPAフィルターによる空気清浄機の活用である。これは0.3マイクロメートル以上の粒子を除去できる。市販されている空気清浄機が、この性能を満たしていればよい。感染を徹底的に抑え込んできた台湾では、いまやバスの車内にHEPAフィルターの空気清浄機が装備されるなどしている。

もっとも、この空気清浄機は広い空間では頼れない。そこで第二は、紫外線を天井付近で水平に照らす装置を使うという方法がある。壁の上部にこうした装置を設置して、紫外線によってエアロゾルに含まれたウイルスを不活化すればよいという話である。これは2021年6月に米CDCが推奨している方式であり、日本では、エアロシールド株式会社が、この紫外線照射装置を開発・生産している

要するに、少々のお金を費やせば、空気感染など恐れずに済む、ということである。このことがわかっている米国ではいま、空調換気システムの強化、HEPAフィルターを活用した空気清浄、紫外線殺菌照射(UVGI)の導入といった施策が、公的資金によって進められている。公的機関であるCDCも早くからHEPAフィルターやUVGIを精力的に紹介している


2.5 小括

○有効な対策:換気、サーキュレーター、HEPAフィルターの空気清浄機、紫外線照射装置

○不要かつ有害な対策:アルコール消毒、アクリル板や座席間の衝立、ビニールシートなど換気を阻害するもの

○有効か無効か未決着な対策:マスク



3. 新型コロナウイルスへの対策の必要性の有無とコロナの今後

ここまで、新型コロナウイルスへの対策は必要であるという前提で、記してきた。しかし、そもそも新型コロナウイルスへの対策は、どこまで必要なのだろうか。

もちろん、当初の2020年春に、欧州や米国でこれに感染した者の致死率がやや高かったのは事実である。このため、大きな恐怖心が世界中に巻き起こされた。

しかし、その後、徐々に治療プロトコルが明確になってきた。世界中の医療現場での試行錯誤とそれを検討した研究論文によって、どういった場合に、どの薬を使えばよいのかといったことが、明確になった。この結果、特に非高齢者を中心に致死率は下がった。また、賛否はともかく、コロナワクチンが開発され、重症化率が低下した。

決定的だったのはオミクロン株の出現で、これはデルタ株以前のSARS-CoV-2ウイルスとは殆ど別のウイルスとさえ言えるほど、これまでとは異なり症状が重症化しないことが明らかになってきた。

その結果生じたことは、たとえば以下のような、欧米での各種コロナ規制の緩和・撤廃である。

デンマーク:2022/2/2に、新型コロナウイルス感染症を「社会的に重大な疾患」とはみなさないとし、屋内でのマスク着用義務、飲食店や屋内施設を利用する際の「コロナパス」提示義務、検査で陽性となった場合の自己隔離義務などを撤廃。

https://www.cnn.co.jp/world/35182951.html

https://en.coronasmitte.dk/rules-and-regulations#ContentPlaceHolderDefault_footerGrid_ctl03_ctl03_panel

スウェーデン:2022/2/9に、公共の集会やイベントでのワクチン接種証明書提示要請、飲食店での人数制限、長距離公共交通機関での乗客のマスク着用義務の撤廃。2022/4/1に新型コロナウイルス感染症を「公衆衛生への脅威、社会への危機」の分類から引き下げ、感染経路の追跡と体調不良時の隔離義務の廃止、外来患者に対する新型コロナウイルス感染症のケア、治療に関する費用免除の廃止、入国時のワクチン接種証明書や陰性証明書の提示義務なども解除し2020年3月以来初めて、全ての国からの入国が可能に。

https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/02/df9aaab86221f607.html

https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/04/6271a0f90fcdc8e0.html

ノルウェー:2022/2/12に、事前の入国申請、ワクチン未接種者などに義務付けていた出国前の陰性証明書の取得、マスク着用義務、感染の隔離義務を撤廃。保育園児及び生徒・学生は症状があったとしても検査を受ける必要はない。

https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-norway-idJPKBN2KI0NR

https://www.anzen.mofa.go.jp/od/ryojiMailDetail.html?keyCd=128034

イギリス(イングランド):2022/1/27に、大半の屋内施設でのマスク着用義務、大規模イベント参加時などのワクチン接種証明書または迅速抗原検査の陰性証明の提示義務を撤廃、2022/3/18より、ワクチン未完全接種者の出発前検査及び入国後検査を撤廃、2022/3/24に感染者の隔離義務を撤廃。British Airwaysも機内でのマスク義務を一部解除。

https://www.bbc.com/japanese/60460931

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR21D6L0R20C22A2000000/

https://www.uk.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_00639.html

https://twitter.com/British_Airways/status/1503729049050353665

 

きりがないのでこの程度にしておくが、欧米のコロナ感染症対策の特徴は、次のように纏められる。

第一は、軌道修正が早く、かつ軌道修正を厭わないことである。

第二は、対策を次々に軌道修正するにあたり、議会などの公開の場でよく議論をしていることである。イギリスなどでは、日本のように与党の事前審査制がないので、与党からも議会で批判や対案が出てくる。このような場では、データとエビデンスに基づいた科学的な対策が公開で国民に見える形で打ち出され議論されるので、データとエビデンスに基づかない非科学的な「専門家」によって打ち出される対策は自然と排除されていく。

第三に、コロナ感染症対策にはメリットとデメリットの双方があるので、よく天秤にかけて吟味していることである。

メリットは、もちろん、死亡者の減少や医療への負荷の減少である。

デメリットは、飲食店の営業への悪影響、マスクの着用による幼児の心と脳と言語発達への悪影響、社会活動の不活発化やロックダウン等に伴う健康上の悪影響(①児童生徒の体力の低下、②成人の肥満率の上昇、③高齢者の運動不足に伴うフレイルや死亡率の増加、④アルコール摂取量の増加やメンタルヘルスの悪化、⑤家庭内暴力や自殺の増加など)、数多く挙げられる。

彼らの政策判断の根底にある基本的なスタンスは、「コロナ対策として死亡者を減らしたり医療への負荷を減らすことも重要だが、その為に感染対策を徹底するあまりに、自殺が増えたり、高齢者の体力が弱って死亡率が増加したり、長期的な健康ダメージとなる肥満やアルコールの害悪を蔓延させたり、未来ある子どもを痛めつけては意味がない」、というバランスの取れた考え方だと思われる。「多くの人が健康であることが最重要であって、リスクの程度に応じて規制を緩めたり撤廃しなければ、人々の健康と生命を最大化するという最重要目標がかえって達成されなくなる」ということだろう。このような価値判断のもとで対策を述べる人は、日本ではまだ少数派にとどまっており、政府の新型コロナウイルス対策の専門家会議委員のなかでは、大竹文雄阪大特任教授ぐらいである。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA037H30T00C22A3000000/


さて、日本で一時期よく聞かれたフレーズのひとつに、「コロナが終わったら・・・」「コロナが終息したら・・・」というものがあった。これのための方策として、私自身は2020年から2021年春頃までは、徹底的な検査と隔離により感染者数を最小化していた中国、台湾、香港、豪州、NZなどを、一つのモデルとして高く評価していた。人口当たりの感染者数が少なかったベトナムや韓国もこれに近いものとして、うらやましく思っていた。しかし、この方策で依然として人口あたりの感染者を抑え込めているのは、いまや中国と台湾だけであり、それ以外の国では感染を抑え込めなくなってしまっている。

事実として、徹底的な検査と隔離により感染者数を抑え込むことは、残念ながら極めて困難であることが明確になったと言わざるを得ない。また、途上国へのワクチン接種の展開により全地球的にこれを抑え込むという夢が語られたこともあったが、ワクチンが残念ながらいまいちの性能で、接種しても感染するので、このSARS-CoV-2が地球上からなくなることはないだろう。

では、コロナはこれからどうなるのか。

答は簡単だ。多くの人が「コロナはたいしたことがない」、「一部の高齢者を除いては重症化しないので、もうこれほどの感染対策は必要ない」、「じつはこれまでも風邪やインフルエンザに起因する誤嚥性肺炎などで多くの高齢者が死んでおり、それらの致死率はコロナと大きく変わらない」と思える、または理解できるようになった時に、コロナは終わるのである。人口当たりの感染者数が日本の10倍以上とされ、国民のかなり多くがコロナに感染した欧米が(ドイツやイギリスは2000万人以上が感染)、続々とコロナ規制を解除しているのは、オミクロン株の到来によって「コロナはたいしたことがない」、もうワクチンも多くが接種したし「一部の高齢者を除いては重症化しないので、もうこれほどの感染対策は必要ない」という共通認識が得られたからだろう。

私の考えはおかしいだろうか。日本経済新聞の4月4日付け朝刊に、感染症学の山本太郎長崎大学教授の発言が載っているが、これが私の考えとよく似ていたので、引用したい。

「オミクロン型の出現により、このウイルスが人間社会から消える可能性は小さくなった。仮に世界中の全ての人々が免疫をもったとしても、毎年約1億4000万人の新生児が生まれ、(新たに感染しうる)感受性者になる。ウイルスが生き残る貯蔵庫になる。きっと社会に定着するだろう。

一方で世界的な流行は今年のどこかで「終息」するに違いない。その終わりとは何か決まった基準があるわけではない。みなが「終息した」と思う時が終わりとなる。

(中略)

中長期的にみると、感染力が強くても病原性が低く重症化するリスクが限りなくゼロに近ければ、それは病原性の強い新型ウイルスが流行するのを防いでくれる。

穏やかな感染症と共存することは、新しい病原性の強い変異から社会を守る防波堤のようなものになる。

ワクチンとうまく組み合わせることで重症化リスクがもう少し減ればいいと思う。いずれにしてもオミクロン型の出現でコロナのパンデミックは「終わりの始まり」にきている。

日本でも、コロナに特化した感染症対策はいらない、以前の生活に戻りましょう、という状況が年内に戻ってくるだろう。」


彼の発言を、私なりに敷衍すれば、オミクロン株の出現は人類にとってはむしろ僥倖となる可能性が高い、ということだろう。

もちろん、今後、新しく病原性の強い変異株が出て来ないとは限らない。それが出てきた場合には、欧米諸国でも規制が再強化される可能性はある。しかし、いまは以前の生活に戻る時期でありそれが可能だ、というのが欧米諸国の判断だろう。

対する日本はどうか。政府も、「専門家」が集う国立の感染症研究所も、世界の医学的コンセンサスを長らく無視し、エアロゾル感染を認めてこなかった。欧米がコロナ規制を続々と緩和・撤廃する頃になってようやくしぶしぶ認めたが、コロナ自体がこれまでとは別のフェーズに入ったのに、依然として思考を転換できず、幼児・児童へのマスクを着用を強化ーー。日本の周回遅れぶりは明らかである。この国で、データとエビデンスに基づいた科学的な思考・対策は、いったいいつになったら根付くのだろうか。


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